Ayako Kawata

2019年5月15日

「ベトナム転職のその後」インタビュー第1回ベトナム歴3年・27歳女性

最終更新: 2021年1月25日

ベトナム日系人材業界歴9年目のGrasp!代表・熊澤が、過去にベトナム転職をサポートしたりキャリア相談を承った日本人の方にインタビューを行います。

ベトナムでの移住・転職後の予想外な変化、今の心境、今後のキャリアなどなど、ベトナム転職のリアル、お伝えします。

風間さんのキーワード

「ポジショニング」「愛嬌」「継続」「成長産業」「ベトナム地場マーケット」

「ベトナムに来た経緯は?」


熊澤

初めてSkypeでお話したのが2016年の頭でしたね。その時は、ベトナム以外への転職も考えていましたか?

風間さん

はい、考えていました。

フィリピン、ベトナム、タイですね。

カンボジアも考えたんですけど、給料がすごく低くて。。。500ドルくらいだったので、ちょっとムリだなと。

タイは、当時24歳だった私はビザが取れなかったんです。紹介される仕事も「工場の事務」とか「休日はゴルフ接待、お酒はマスト」的なものが多く、それはやりたくないなと思っていました。

フィリピンは、転職エージェント2社に登録したんですが、求人は高い英語力が求められるものばかりで、紹介されたのは「日本語教師」とか「コールセンター」とかだけ。営業職のお仕事は紹介されませんでした。ここも、私のやりたい事とは違うかなと。

熊澤

そんな中で、ベトナムは当時一番しっくりくるものがあったと。

風間さん

そうですね。

熊澤

ベトナムで他の会社からもオファーを受けていましたか?

風間さん

もらいました。IT企業とか、旅行会社とか。

熊澤

そうですよね。最後に意思決定される際にお話した覚えがあります。

そこで、今の仕事(食品メーカーでの営業職)に決めたのは、それまでの経験との一貫性が決め手だったかなと。

風間さん

はい。大学では食べ物や食に関して勉強したので、そもそも食品に興味があった事も大きな決め手だったと思います。日本の製品を世界に広めるという事にも興味がありました。

「3年前の視点で、今の自分を見る」


熊澤

2016年にベトナムに来て、3年でマネージャーになって、部下が10人いる状態。

この状況って、3年前は予想していないですよね?

風間さん

そうですね。3年前は、本当に何もわからなかったです(笑)

熊澤

風間さんが当初求めていたものを、今は結構満たせている状態ですよね?

海外で働き、食品関係の仕事をして、日本の製品を海外で売って、役職もついて、英語の環境で仕事ができて。

日本にいる同世代の人から見たら、「風間さんってすごいね!」ですよ。

もちろん、ご本人にとっては、「ただ普通に働いてるだけだよ」ってなると思うんですけど、その若さで誰もが知っている大手企業の現地法人のセールスマネージャーというのは。例えば、ご自身が学生の頃に、「大手現地法人のセールスマネージャーの27歳女性」と聞いたら、「すごい!」と思ったと思いますよ。

私自身もあるんですよ。建付けだけ見れば、「海外で起業した日本人」で「すごいね!」っていう。やっている本人からすれば、「別に。。。」じゃないですか。

そんなもんなんですよね。

ただ、その現実を知ったということは、とても大きいことですね。

風間さん

確かにそうですね。

「現地採用3年目の心境」


熊澤

3年過ぎた今の心境として「今後のキャリア」についてどんな風に考えていますか?

「こういう事やりたい」とか「人生設計」とか。

風間さん

そうですねー。。。

こちらでの知り合いも、7割くらいは日本に帰ってしまっていて。

今の気持ちは「半々」です。

日本に帰って「ちゃんと働く」というか、日本に帰りたいなという思いもありますし、引き続き海外で働きたいという思いもあって。

日本の製品を世界に広めるって、学生時代にやりたいと思っていた事ができているので、自分に対しての満足感はあります。

でも、ずっと同じ仕事はどうなのかな、、、って思っちゃいます。

自分自身で決めている売上達成目標があるので、それを達成して、達成感を味わってから次に行きたいなと思っています。

熊澤

なるほど。現状では、そろそろ次の転職先を具体的に考えなければならない時期にあるという感じですかね。

風間さん

どうやって考えればいいか、アドバイスはありますか?

熊澤

風間さんの場合は、27歳なのでね。27歳は若いですよ、本当に。

結婚や出産を考えれば色々あるかもしれませんが、

仕事という意味で言うと、まだまだ先は長いですよ。20年、30年。

なので、何を大切に生きていくかっていうのは、結構大きなテーマな気がするんですよね。

そこは、私が転職相談を承る時には必ず聞くんです。

「なぜベトナムなんですか?」なんて、ほどんどの人は理由ないので。

それよりも「あなたにとって何が今一番重要なのか?」

お金なのか、仕事なのか、他人に認められたいのか、まっとうな社会人になってバランスのとれた生活をしていきたいのか。

そんな風に考えた時に、風間さんは日本に帰って働きたいですか?

風間さん

そうですねー、、、日本に帰って働くのは、あんまり。。。

この前シンガポールに行ったんですよ。「すごいなこの都市!」って思って。

そこからベトナムに帰ってくると、「なんでこんなに道が汚いんだろう」とか「何をするにも時間がかかるな」とか。その辺を考えるようになっちゃったんですよ。

時間を無駄にしているんじゃないのかな、って思っちゃう時もあります。

お客さんに会いに行くにもいちいち時間がかかるとか。

もちろん、ホーチミンはこれから成長していく面白い街だと思うんですけど。。。

日本に帰ったときは、「活気がないな」とか「おじいさんおばあさんばかりだな」とか思ってたんですけど。シンガポールに行って、別の視点で見るようになったら。。。

でも、日本に帰ったとしても、東京では働きたいと思わないですね。以前、東京で働いていましたけど、孤独というか、寂しさを感じていたので。

日本に帰るなら地元に帰ろうと思っています。

熊澤

地元で仕事あるんですか?

風間さん

いやー、そこなんですよね。。。

今の時代、少子化なので選ばなければあると思うんですけど、今より給料低くなると思います。地元の友だちも、15万〜20万円の間なので。

熊澤

まあ、夢は感じないですよね。今後もある意味縮小せざるをえない国ですからね。

そう考えるとやはり、「ポジショニング」は大事だと思うんですよね。

シンガポールや香港などで転職した方が良いんじゃないですか?

風間さん

うーん。。。

「これまでの3年で得たポジショニング」


熊澤

先程、こちらでの知り合いがどんどんいなくなっているとおっしゃっていましたが、これって実は、「27歳にしてベトナムでのキャリアが3年目の人」が希少という事でもあって、それは風間さんの強みになると思うんですよね。しかも1社で3年となると、どう考えても強みですよ。

今後の戦略としては、その強みをいかにして活かしていくかですよね。

次に考えることは、どういうポジションをとっていくかってことかと。

風間さんの現状は、海外でモノを売って成果を出したことがあるというポジショニング。

これって強みだと思うんですよ。

1年2年で帰国する人を多く見てきたかと思うんですが、私自身も見てきた中で、風間さんはポジショニングが非常に良かったと思うんですよ、年齢的にも、選んだ会社も。ちょうどベトナムで飲食店が急増する最初の段階からこの業界にいたって事ですよね。そこにポジショニングしているのって、結構重要なことで。

例えば、今から私のいる人材業界に入ってベトナムでゼロからサービスを売るって超大変ですし。

業界が右肩上がりで成長している時に、そこに入って、未経験から始めたというのはよい。

風間さんは法人営業職未経験で始められたのですが、何が良かったんだと思いますか?

風間さん

そうですね。私が入社した時に、ちょうど高島屋ベトナムさんがオープンし、食品系の日系企業がドサッと進出してきた時期だったんです。お客様も私もベトナムが初めての中で、お客様はベトナム事業面で私を頼ってくださり、私自身は業界の事がわからないのでそれについてはお客様から何でも教えて頂ける状況でした。その流れで商品知識を身につけることが出来たかなと。

あと、上司からも、法人営業について具体的な事をやり方として教えて頂けたので、それが良かったのかなと。

熊澤

なるほど。ベトナムの市場で生き残っていくために、日系企業が持ちつ持たれつだったという環境にいらした幸運もあったようですね。

次はこういう業界でやってみたいとかこういう職種でやってみたいとかは具体的にありますか?

風間さん

そうですねー。最近思うのは、専門性を持っている人はやっぱり強いなと。資格がある人は、どこでも活かせるじゃないですか。そういうのは、いいなーって思っちゃいます。

逆に営業職だと、なんでもやれるんですよね。

一つの分野を極めていきたいなと思います。

熊澤

「ベトナムで食品を売る」ということには、専門性を感じられないですか?

「ベトナムで食品を売れる」んですよ。これは専門性だと思うんですけどね。

専門性という実感はあまり持てないものですかね?

風間さん

うーん、他の企業に行ったら、また他の一から別のモノを売らなきゃなという感じですかね。

「現地採用3年目、次のキャリア」


熊澤

さきほど私「シンガポールや香港などで転職した方が良いんじゃないですか?」って言いましたが、最近はあまり言わなくなったんですけど、海外キャリアのあり方として、英語があまりできない若い人とかがベトナムで3年位やって、次の転職先として、英語ネイティブのシンガポール、香港、欧米っていうのはやはりアリだと思うんです。

風間さんって、そういうチャンスを得られるかもしれないですよね。

今まで3、4年続けてきたからこそ選べるものって絶対にあると思いますよ。

1、2年で辞めていたら「海外経験がある」と言われても納得できないじゃですか?

3−4年やってきた分、風間さんにはシンガポールとかに転職する権利があると思いますよ。

実際に仕事があるかどうかはともかくとして。

風間さん

ベトナムだと、駐在案件ってあまり多くないですよね?

現地採用っていう形もいいですけど、限度があるじゃないですか。収入面でも待遇面でも。

熊澤

駐在案件は全然ないですよ。

ベトナムだと、副業をガッツリできるようなポジションじゃないと、なかなか魅力はないですよね。

風間さん

そう思います。

ベトナムで転職するんだったら、8−17時はガッツリ働いてという形ではなく、夜などにちゃんと時間があるような形がいいなと思います。

熊澤

ベトナムで、風間さんだからことできることをやって、風間さんだから食べていけるっていう状況を作るのも一つ重要かもしれませんね。

風間さん

そうですね。そうなったら一番いいですよね。

「何ができるかなー」って思っちゃいますけど(笑)

熊澤

もちろん、日本と同じ位の収入が得られるかはわからないですけど、自分が食べていける、自由な時間を作れる、行きたい所に行きたい時に行ける、っていう状態をつくるのは、次のキャリアとしては良いかもしれないですね。

風間さん

そうですね!最近、時間って大切なんだなって思いますよ。

熊澤

大切ですよ。時間はお金では買えないですからね。

私の場合、独立して一番いいのは、時間ですよ。時間を自分で全部組み立てられる。収入については、家族がいたり社員もいたりでバランスを取らなければいけないですけど。それでも時間が自由になるっていうのは、素晴らしいことですよ。

昨今のご時世を踏まえると、時間の価値と重みってさらに増しますよ。

今はまだタイムバンク(https://info.timebank.jp/)などに見られますが、いわゆる著名人に限られていますが。

専門性については、あれですよ。

風間さんを見ていて、人付き合いがそんなに苦手そうに見えないんですね。

裏表がなく、愛嬌があるって見られますよね。

それも、とても重要ですよ。

中途半端な学歴、中途半端なスキル、中途半端な語学力よりも絶対に重要ですよ。

ベトナムにおいては、全くそうです。

そこがあれば、ちゃんと仕事が見つかって、それなりのポジションに行きますよ。

そこは、風間さんの強みだと思います。

日本に帰っていった人たちの事を思い出してみてください。

良し悪しではなくて、その人達の仕事がなぜうまくいかなかったのか。

やっぱり、何かが欠けている要素があるんですよね。

風間さんの場合は、ポジショニングも含めて、いろんな事のバランスが良かったんだと思うんですよね。選んだ業界も、そもそも希望にあった業界の募集があったということは運ですし、ここまで辞めずにやってきたというのも。

だから、やっぱり3年超えるっていうのは、価値だし強みなんですよ。

そこは、価値にしていかないといけないと思うんですよ、間違いなく。

風間さん

なるほど。次のキャリアはまだ具体的には見えていないんですけど、以前熊澤さんとお会いした時に「何か一つ始めてみたらいいですよ」ってアドバイスを頂いて、それから、始めたことがあります。

日本語を教えたりとか。

これから友人と始めようとしていることもあって。

熊澤

いいじゃないですか。

3年前に始めるのと、今始めるのでは重みが違うというか。

とても重要なことだと思います。

やっぱり、特殊なスキルや経験がない方、エンジニアなどの特定領域の専門家ではない方は、一定期間継続してやらなきゃダメですよね。

風間さんを見ていてより一層そう思います。

「3年いて、性格とか変わりましたか?」


熊澤

3年いて、生活とか考え方とか変わったと言うか、広がったりとか感じますか?

風間さん

そうですね、受け入れる幅は広がったかなとは思います。

最初の部下を持った時は、すぐ休むベトナム人に対して休むたびにイライラしていたんですよ。「なんでこの人は仕事なのにこんなに休むんだろう」とか。

最近は、「まあ、そっか」程度で。良いのか悪いのかはわからないですけど(笑)

熊澤

ご両親に何か言われますか?「あなた、変わったわね」とか。

風間さん

それはないですね。

ただ、帰国する度に「ベトナムくさくなったな」ってよく言われますね(笑)

どんな意味かはよくわからないですけど。

熊澤

日本人ぽくない?

風間さん

わからないですけど。でも最近、こっちで「日本人」って言われなくなりました。

ベトナム語でものすごく話しかけられたりとか。

韓国人と間違えられたりも。

「ベトナムの事、好きとか思いますか?」


風間さん

うーん。もちろん、好きな面と嫌いな面がありますけど。

総合的には、好きかなって思います。

嫌いなとことで行ったら、「道が汚い」とか「全てにおいて雑」とか。

仕事においては、日本人くらいに細かいところまでは考えないじゃないですか。

そういう所は好きじゃなかったりしますけど。

ただ、楽しいこと好きだったりとか、優しい印象はありますね。

最後に「ベトナムで働く事」勧めますか?


熊澤

風間さんと同世代、または自分より若い人が「ベトナムで働きたい」と言ったら、勧めますか?

風間さん

勧めますね。

やる気があることはすごくいいと思いますし。

ただ、3年いると、1年や2年で帰ってしまう人を圧倒的多数で見てきてしまったので、「ベトナムで働きたい」なら何かしら、目的は必要かなと思っています。

最近テレビとかでよくあるじゃないですか、物価の安い国で良い給料をもらって優雅な生活をするって。または、本とかを読んで「海外に出たほうがいい!」とか。そういう情報に感化された方は、現実とのギャップが大きすぎて帰ってしまうケースが多いかなと。

なので、まずはしっかりと目的を考えるのがいいと思います。


風間さん、インタビューに応じていただき、誠にありがとうございました。

今後の風間さんの更なるご活躍をお祈りしております。

Grasp!の転職支援サービスは、キャリア相談を重視しています。

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