Ayako Kawata
2019年5月17日
最終更新: 2021年1月25日
ベトナム日系人材業界歴9年目のGrasp!代表・熊澤が、過去にベトナム転職をサポートしたりキャリア相談を承った日本人の方にインタビューを行います。
ベトナムでの移住・転職後の予想外な変化、今の心境、今後のキャリアなどなど、ベトナム転職のリアル、お伝えします。
「英語」「エンジニア」「現場」「ベトナム人との結婚」「運」
熊澤
初めてSkypeで話したのは2014年の夏。まだ日本にいる時でしたよね。
新卒で入社した最初の会社は数カ月で退職を決意し、転職活動を開始。
どんな仕事だったんですか?
Bさん
鉄スクラップの会社で。
同期はみんな工学部出身で、なぜか自分だけが本社の営業企画に配属されたんです。
仕事内容的に工学とは関係なかったのとか、人間関係とかで、海外に行こうと。
熊澤
海外転職活動はどうでしたか?
Bさん
国はこだわらずに職種で選んでいました。
水処理関係の仕事をしたくて。
インドネシア、ベトナム、タイでの仕事の紹介を受ける中で、希望に合った仕事があったのがベトナムだったという状況ですね。
熊澤
Bさんはほぼ新卒の状態でのベトナム転職でしたよね。
2014年当時は、新卒でもベトナムのビザを取れたんですよね。
今は原則は無理ですね。裏は未だにいろいろあるようですが。
ベトナムビザが取りやすい最後の時期にいらっしゃった感じですね。
ところで、ベトナムには興味はありました?
Bさん
全く(笑)
正直、ベトナムの場所もわからなかったし、東南アジアにも興味はなかったです。
新卒で就職した当初は、将来的には欧米に行こうと思っていた位で。
熊澤
それが今となっては、ベトナム人の方と結婚されて。
Bさん
そうですね(笑)
熊澤
第二新卒でベトナムって事ですよね。珍しいケースですよ。
同世代っていますか?
Bさん
同世代はほぼベトナムに残っていないですね。
熊澤
ベトナムでの就職先は、未経験での入社でしょうか?
Bさん
はい。未経験ですが、業務内容的には大学で勉強したことが活かせる仕事でした。
ODAの現場業務をやっていました。品質管理、工程管理などの仕事です。
熊澤
そこで4年続けて、退職をされたのはいつですか?
Bさん
2018年12月です。
熊澤
確か、ご結婚されたのは2018年11月でしたっけ?
Bさん
はい。
熊澤
退職の理由はなんでしょうぁ?待遇面?今後のキャリアを考えてのことでしょうか。?
Bさん
一番は待遇ですね。結婚したって事もあり、待遇面で上司に相談したら、日本の本社勤務か、退職かという選択肢になって。
熊澤
日系大手は現地採用のバジェットが結構、かっちりしておりますもんね。
転職エージェントは、求職者への誘い文句として「日本では入れないような大手一流企業に入れますよ」という触れ込みもしていますけど。
現実は、お金のある大企業でも現地採用のバジェット決まってるので、待遇は別に良いわけではない場合が多いなあ、との印象ありますね。
Bさん
入社時の給与は1400ドルで、毎年30ドル程度しか上がらず。。。
熊澤
失礼な言い方になりますが、それはちょっと上がらな過ぎですよね。
入社当初は、給与アップとかキャリアアップとか考えていましたか?
Bさん
入社当初は1500ドル貰えれば十分だろうと思っていたんですが。
3年目あたりからは給与が上がらない事に疑問がでてきてて、結婚となった時には、さらにこのままでは厳しいかなと思うようになりました。
でも、5年近く経った今でも、日系だと1500ドルスタートがまだ普通じゃないですか?
熊澤
そもそも1500ドルって額には大した根拠ないんですよ。
15年くらい前は、「ベトナム人人材は300ドル、日本人材は1000ドルで現地の人よりは高い」という感じ。その後、日系の人材紹介会社が進出し始めて、日本人求職者を呼び込むべく、生活費を考慮したら1500ドル程度だろうということになった。
だからといって、1500ドルじゃなき全く生きていけない訳でも何でもなくて。
そもそも、給与額の良し悪しなんて、個人個人の「今の給与」と「今の生活」と「今後のキャリア」と「今後の生活」との組み合わせ・バランスで決まってくるかと思いますねえ。
背景は置いといてこの給与額は安いのか高いのかという議論になってしますのは、正直ナンセンスだなあと思ったりもしますね(笑)。
ただそうは言っても、ずっと1500ドルのままだとハリのある生活はできないのも確かですね。
私の考えでは、ベトナム市場での未経験者、で人文系・社会科学系の学歴であったり、営業・バックオフィス系のキャリアの方は1000ドル程度でもしょうがないと思う。
経験がない場合は、ベトナム人スタッフと給与額の差をつける意味がない。
ただ、そこからのスタートで、3〜4年経ってもずっと変わらないとしんどい。
とは言え、前職で4年しっかりとキャリアを積んでないと、今の選択はできなかったですよね?
Bさん
はい。前職での経験があったから、今の採用につながっていますね。
熊澤
こちらに来た当初から振り返ると、今のBさんは、ベトナムでキャリアを積んで、次のキャリアにしっかりとつながっていますよね。
私は、こちらでのキャリアは「継続」が大切だと思っていて。そういう意味で、Bさんは前職で4年以上継続をしてきたから、いま駐在員という選択ができたし、今後は他の国というイメージも持てている。
もちろん、計画を立ててやったわけではなくても。
Bさん
確かにそうですね。現職への転職でも、決して「駐在員案件」を探していた訳ではないけど、提示された案件の中に「駐在員」という選択肢があった訳で。
こちらでの友人も、現地採用から駐在員への転職というケースがあり、現地採用のステップアップとして「駐在員」というケースがあるんだなと今は思っています。
熊澤
それはレアですね。現地採用から駐在員というのはそんなにないですよ。
だた一つ言えることは、一定期間ベトナムでやっていけている方に共通しているのは、みんな「運がいい」ってこと。
Bさん
ご縁には恵まれていますね。
熊澤
そうですよね。今の駐在員案件も日本に行かずにベトナムで見つけていますしね。
熊澤
今後も、ベトナムにいたいですか?
Bさん
うーん、そうですねー。ずっとベトナムもアリですけど。
今の会社は、ミャンマーやスリランカなどの案件もでてきているので、他の国がいいですね。ベトナム拠点でもいいけど。
熊澤
今後もずっとベトナムとは思っていないと。
Bさん
まあー、でも、奥さんありきかなと。
これから駐在員としてハノイに行きますが、奥さん納得してないですし(笑)
もし行ってから奥さんがうつ病とかになっちゃったら、ホーチミンに戻るって事になりますし、他の国に一緒に行っても奥さんが辛くなったらどうしようかなとは思います。
それに、今後子どもが出来たら、小学生になった時にどうしようかとも考えます。
自分のキャリアというか、これからは家族ありきになっていくかなと。
熊澤
なるほど。そこが中長期的な課題というか。
熊澤
ベトナム人と結婚しているなら別だけど、そうではない場合、特にベトナムにいる理由が特にないというタイミングがある。
これって、ベトナムにおける日本人の転職市場の課題でもあって。
1、2年こっちで働いて、次のキャリアが見えないと感じた時、いる理由もないので帰るという人が多い。
ベトナムにいる理由なんていらないと思うんですけど。
なので、現地採用の営業職の方で、今後もしばらくはベトナムでやっていきたいという方には、こちらの日本人コミュニティーで「△△社の〇〇さん」ではなく「〇〇さん」として認識されるようになるのがいいとアドバイスしています。
「〇〇さんだから買う」とか「〇〇さんだから紹介する」という状況になるようにと。
私のいる人材業界なんかもまさにそうで、会社名は実はそれほど重要ではなく、重要なのは個人でのつながりなんです。案件はどこも同じ案件を扱っているだけなので。
Bさん
今気になってるのが、ベトナム人の奥さんがいる方が日本に帰ったその後どうなってるかって事で。
熊澤
そうですねー。あまりないケースですけどね。
子どもの教育をどこでするかという選択肢としてはあるかと思いますが。
ただ配偶者がベトナム人の場合、一旦ベトナムを去ってもまたベトナムに戻ってきますよ。
次は今後の生活ですね。
Bさん
そうですね。これからどうしようかってずっと思っています。
今の課題は、打ち込めることがない事ですね。
大学時代は「英語」に全力を注いて海外に行くというモチベーションもあったが。
今は、ベトナム語を極めようというモチベーションもなく。。。
熊澤
それは何ですかね?
結婚すれば、奥さんからの干渉やら何やらで。
Bさん
生活費も全部自分が払っているし。
このままでいいのかなって。
熊澤
Twitterとか見てるとキラキラしている人が多いですしね。
Bさんは日本での仕事経験がほぼない状態でベトナムでのキャリアを始めていますが、そこへの不安はありますか?
Bさん
ありますね。
日本のしがらみとか、やっていけるかどうかという不安。
熊澤
そうなると、ベトナムでどこか「突き抜ける」必要がありますね。
Bさん
そうですね。例えば、数十年後に転職をするときに「20代から海外経験のある人材」と「ずっと日本で働いてきた人材」のどっちを選ぶかとなった時、海外事業を進める企業だと即戦力になる海外経験のある人を選ぶと思うんですね。そこで選ばれる人材になるのを、今は目指しています。
Bさん
ベトナム好きですよ。
こちらで働いてる日本人の方で「ベトナム、イヤだ」って言う方結構いるんですよね。
衣食住が合わないとか、家族は日本だからとか。
会社からいわれたから来てるからで、好き好んで自分からは来ないと。
そう言う方の話を聞いていると「自分はベトナム好きだな」って思います。
熊澤
こちらで結婚もされているのでなんですが、ベトナムに来て良かったかどうか(笑)
Bさん
そうですねー(笑)
良かった点は、1日で仕事のストレスのかかり具合がこっちの方が少ないっていう点ですかね。
あと、人間関係もこっちの方が楽だし。
日本だと、社内での承認のプロセスの長さとか、理解できなかったですね。
熊澤
日本の友人や家族には何っておっしゃられますか?
Bさん
家族は、反対もなく、好きなことをやればいいと。
地元の友人は、、、地元を出たこともなく英語も話せずという人が多く、話が噛み合わない事が多いですね。「すごいね」で終わる。「小さい頃から行ってたことが叶ったね」的な。
大学のサークルの同期や先輩は今でもつながっていて、海外経験も豊富。ベトナムで挙げた結婚式にも来てくれたり。
熊澤
海外でキャリアを積むという高校時代の夢はいま叶っている?
Bさん
そうですね。夢は実現出来ましたね。
熊澤
4年前もBさんのキーワードは「英語」「エンジニア」「現場」でした。
変わってないですね。
一貫性をお持ちであることにあらためて驚きました!
Bさん、インタビューに応じていただき、誠にありがとうございました。
今後のBさんの更なるご活躍をお祈りしております。
Grasp!の転職支援サービスは、キャリア相談を重視しています。