多くの在ベトナム日系企業が抱える悩みの一つに、従業員(特にベトナム人や現地採用の日本人スタッフ)の高い離職率が挙げられます。
採用活動を社内で行うことは、採用コスト、面接、入退社時の諸々の手続き、トレーニングなど、他の生産的な作業時間を削ってそれらに時間を割く使う必要があり、企業にとって非効率的な作業であるのが現状です。
ここでは、ベトナムでの採用時の注意点や日々の業務の中でベトナム人社員の離職を防ぐために役立つForbes Human Resources Council(*)による、平均以上の離職率を抱える企業が注目すべき重要な9つの要素をご紹介します。
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企業は時に事情により従業員を失うことがあります。従業員にとっての退職は、キャリアチェンジや、より良い機会の追求、人生の変化への決意などのキッカケであり、どんな企業であっても正常なことです。ただし、離職率が上昇しているようであれば、懸念すべき重大な原因を探る必要があります。
(原文:
Council Post: Nine Areas To Investigate When Experiencing High Employee Turnover : https://www.forbes.com/sites/forbeshumanresourcescouncil/2019/08/22/nine-areas-to-investigate-when-experiencing-high-employee-turnover/#6456633211e5)
1. 離職率が高いエリアを確認する
約10%の離職率が発生することは至って正常です。しかし、離職率が高まっている場合、まず会社のどこから離職が起こっているのかを確認する必要があります。
特定の1つの部・課・チームからの離職でしょうか?
次に、該当箇所のリーダーを確認しましょう。特定の層・タイプの社員では無いでしょうか?(例:性別、年齢、出身地域、興味や信仰、性格など)
離職がどこで発生しているのかを知ることで、人事部と管理職層は、どこから対処するべきか、どのような行動を取るべきかを知ることができます。
2. 共通する退職理由
まず、退職理由に共通点があるかどうかを調べます。
退職時の面談をレビューし、共通の退職理由を探します。退職理由がマネージャーなのか、チームメンバーなのか、他の何かなのかを知ることが重要です。この方法を行う事で、次の社員を失う前に根本的な問題の解決に取り組むことが出来ます。
3. 社員の背景を理解する
彼らの退職に至るまでの背景を理解する必要があります。
社員は給与、福利厚生、リーダーシップに不満を抱いている可能性があります。または、現在会社が大きな変化を遂げている最中であれば、従業員に必要なスキルや能力にも変化があるということではないでしょうか。
その社員は競合他社に引き抜かれた可能性もあります。
彼らの背景のストーリーを理解する事で社員に対する判断の方向性が決まるでしょう。
4. 管理職層のマネージメント
アメリカ人の50%がキャリアのある時点で、上司から逃れるために退職したと言われています。
悪影響を与えるリーダーシップは社員の安全意識に脅威となり、会社への帰属意識を阻み、会社に居場所を与えず、会社へのエンゲージメントを低下させる可能性があります。
社員の退職が、社員自らの選択なのか、それとも彼らが追い詰められた結果、退職に至ったのかどうかに焦点を当てましょう。
5. 退職までのパフォーマンスデータ
企業は社員のパフォーマンスデータを確認し、社員の欠勤の増加、売上の減少、または顧客フィードバックの低下など、分かりやすい指標を探りましょう。
推測に基づいた行動ではなく、データを使用した原因理解が、最善の解決策を見つけるための鍵となります。
6. 在職期間
従業員が入社90日以内に退職する場合、採用プロセスまたは入社・研修プロセスのいずれかに問題があります。
間違った候補者の採用、社員教育・トレーニングが効果的に行われていない、方向性が異なっていることなどが原因に考えられます。
7. 他社の待遇
同業他社の採用基準を把握しましょう。
企業が高い離職率に直面している場合、競合他社が在宅勤務オプション、より明確な昇進への道筋、より良いワークライフバランスなどを提供していることがあります。
8. 給与の見直し・調整
少なくとも年に一度は在職期間と照らし合わせて市場における適正給与調査をしましょう。
マネージャーは、部下が現在の仕事を楽しんでいるのか、それとも挑戦や変化を求めているのか、などを面談を通して確認すると良いでしょう。
退職面談で社員が述べる退職理由に反応するのではなく、調査によって適正な給与に調整出来ます。
9. 従業員が会社の配慮を感じているか
自問してみましょう。従業員は会社からの配慮を感じているでしょうか?
あなたの企業はどのように社員に配慮を示していますか?
従業員を人間個人として心から配慮するということは、働きやすい職場環境を作る最初のステップであり、より大きな滞在意欲にも繋がります。
Grasp!指南:ベトナム人社員採用時の注意点
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日本以上にジョブホップが盛んなベトナム。
Grasp!では、”せっかく時間も費用も掛けて採用したベトナム人社員が1週間で退職した”、”良い社員だったのに続かないため、せっかく教育をしても半年おきに採用活動をしている”などというご相談を受けることが度々あります。
日本とベトナムでは商習慣が異なり、仕事・人生そのものに対する考え方や向き合い方も異なります。その点をしっかり理解し、敬意を示した上で下記のような事前の対策をしていくことでベトナム人社員の退職率を抑えられると思います。是非参考にしてみてください。
すでにベトナム人の採用に慣れていらっしゃる方もおられると思いますが、短期での退職を防ぐために、あえて基本中の基本からお送りします。
■ベトナム人採用:書類審査での注意点
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①年齢に関わらず、ベトナム人求職者を子供扱いせず、明確に敬意を表す
日本人に比べ見た目の幼さが目立つ方、ネイティブでない辿々しい日本語を話す方、などがおられますが、日系企業に応募されるベトナム人求職者はそのほとんどが成人した大人です。
敬意を持ちビジネスの場にふさわしい言葉遣いを心がける。
②ベトナムやベトナム人に対する一般的な先入観を捨てる
まじめ・給料が安い・親日、などは本来、個人的な性質・状況の問題であり、ベトナム人全体に当てはまるものでは全くありません。
今一度、こうした先入観に苛まれていないかの確認、及び自制が必要です。そうした先入観は事実認識を歪める原因となり、判断を誤りやすいです。
③とにかく「事実確認」
過去・現在の「事実・状況・背景確認」・・・今、何をしているのか?どこに住んでいるのか?
→履歴書の記載情報のみでは判断しきれない曖昧な事が多いです。
◎例えば、ベトナムでは無職であることや、友人宅に間借りしてることなどをはっきり説明しない人が多いです。現在、ほぼ無就業である理由・背景をダラダラ説明する方がいますが、要は「私は現在無職です」「実家に住んでいます」などとはっきり述べさせるのが大事です。
無職への後ろめたさの余り、事実を隠す。こういう事がよく発生します。本人の後ろめたさはさておき、とにかく「事実確認」に主眼を置くことが面接の効率アップ・時間短縮にも繋がります。
事実確認を怠ると、言った言わないや「資格は実は持っていない」「大学の卒業証明書を紛失した」など、後々のトラブルの原因となり、
そもそも
▲この人は採用するに値する人だったのか?
▲この会社は私の求めているものだったのか?
ということになります。
■ベトナムで人材紹介を利用:こんな相談もできる!
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【ベトナム人採用での費用対効果の最大化を目指して】
①提供可能/不可能なサービス内容の事前確認。
→「出来ること・出来ないこと、やらないこと、やりたくないこと」
在ベトナムの各人材会社は「ビジネスモデル」や「海外法人ならではの投資対効果」の観点から、こうした本音をそれぞれ持っています。
顧客を選んでいるということですが、その点、「仲がいいから」「昔から付き合いがあるから」での利用はよくあることですが、費用対効果の向上とは関係ありません。
②紹介Fee分割払いの提案
→紹介サービスのビジネスモデルの根幹です。
ビジネスモデルの根幹へリーチされることが、御社の費用対効果を上げます。紹介サービスの価値に対する費用に対し直接的な理解と納得を持つことが出来ます。
③担当者の交代要望
→企業側の事情への理解、業界知識、ベトナムや会社経営に関する理解。これらの点で満足ができない場合、速やかに担当者の交代を申し出てください。
人材紹介サービスは御社の採用での課題解決を支援するサービスです。課題への理解が及ばない担当者は、サービスとしての価値提供が叶わないということです。
④ベトナム現地スタッフに採用を丸投げしない
→そもそもベトナムでの人事部門・採用部門の教育、強化は進んでおりますでしょうか。人事・採用部門が経営陣や既存社員の理解・納得を得ることを最優先しておりますでしょうか。
海外法人において現地化が100%完了していない場合、人事・採用部門における実務及び意思決定権限は本社側の社員が持つべきです。
というのは、現地法人の人事・採用部門にとっての成果やFairness(公平性や透明性)が会社全体にとってのそれらと矛盾している場合があります。
それは
・紹介Feeの高低のみで紹介会社を選定する
・募集の本質を理解しておらず、KPIの達成が主眼となっている。
・履歴書の数集め
・自分のキャリアや給与額との整合性・矛盾への過度な配慮
が発生するためです。
■ベトナム人採用:面接時の注意点
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ここまで、退職率を抑えるために書類審査で注意することや人材紹介会社の利用法などをご紹介しました。
ここでは、面接時に注意することをリストアップしていきます。是非参考にしてみてください。
◯日程アポイントの設定の際の連絡・やり取りの際の態度、服装、立ち振舞、面接官以外の全ての人に対する対応の仕方の確認。
◯答え合わせ。
→書類審査時の事実確認及び疑問
◯答え合わせの際、どれだけ、事実ベース・ロジカルに話ができるか。
◯抽象的な質問と具体的な質問いずれも行う。
→・抽象:生き方・キャリア・仕事について、など。
・具体:成功体験・失敗体験、など。
◯日本への渡航経験、日本に対する思い・知見について述べてもらう
◯短期中期長期の計画・目標・夢について述べてもらう。
◯実技試験を必ず行う。日本語スタッフの場合、翻訳を行ってもらう。宿題でもその場でのテストでもOK。
◯必ずベトナム人スタッフとの面接も行う。
◯長所より短所を重視
→ネガティブなことに対する反応や耐性を理解するため
◯現職(前職)給与額、希望給与額について、詳しくヒアリングする。
→給与待遇の話は、後で言った言わないになりやすいです。
・GrossかNetか
・基本給額か基本給額+各手当額の総額か
・支給通貨の確認→現職(前職)ではVND,今回はUSDなど。
・総支給額に対する基本給額の割合(70%でいいのか、100%を希望なのか?)
◯KPI・OKR・売上額・各数値の前年比率・歩留まり率など、これまでの職歴における評価数値について具体的な話をヒアリングし、自社の評価数値についても説明する。
■まとめ
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上記に述べたことは、突拍子も無いことはほとんどありません。
あえていうと「常に事実ベース」で評価するということに尽きます。奇策はなく、王道を丁寧にということでしょうか。
そうしたプロセスを実施する上で、「情報収集・事実確認・コミュニケーション支援・意思決定支援」のツール・機能として本質的な問題解決・改善に資するサービスはなんだろうか?と思考停止されること無く問い続けることが重要です。
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