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アジャイル組織を作るための5つのポイント:前編

執筆者の写真: Ayu ObaraAyu Obara

更新日:2022年6月15日

「アジャイル」とは何か?


「アジャイル(agile)」の名詞形である「アジリティ(agility)」とは、もともと「敏捷」や「機敏」という意味ですが、 ITやビジネスの文脈では、方針の変更やニーズの変化などに機敏に対応する能力を意味します。


アジャイル開発とは、新機能や商品を短期間で継続的にリリースし、その都度バグなどに対応し軌道修正していくソフトウェア開発のアプローチです。

アジャイル開発とはソフトウェア開発の手法の一つですが、多くの企 業は現在、目まぐるしく変化する市場やニーズに柔軟に対応 していく必要に迫られており、その点でアジャイル開発、そしてアジャイル開発を取り入れたアジャイル組織やアジャイルな働き方に注目が集まっています。


激しく変化する環境に対して、私たち自身がパラダイムシフトし、また常にあるべき 姿に向けて改善、進化しつづけることがカギとなります。


デジタル・トランスフォーメーションをきっかけに社会が激しく変化している昨今、物事の予測がたてにくい複雑・不確実な世の中になりつつあります。

VUCA時代、という言い方がありますが、それは私達のキャリアや仕事・会社との向き合い方も同様に、変化に対応し「価値」を提供し続けることが求められるということでもあります。


Grasp!でもその考え方の導入を始めている「アジャイル組織」はソフトウェア開発の手法の一つ「アジャイル開発」から発想を得た新しい組織の在り方の一つです。

既存の組織の在り方を「機械」に例えると、アジャイル組織とは「生き物」のような組織で、その組織に関わる一人一人が「生き物」の細胞ひとつひとつに例えられます。

世の中の動くスピードがより速くなっている今、組織の在り方を見つめ直してみてはいかがでしょうか?


※こちらの記事は下記のマッキンゼー社によるアジャイル組織に関する記事をGrasp!が翻訳したものになります。


原文はこちら The five trademarks of agile organizations | McKinsey : https://www.mckinsey.com/business-functions/organization/our-insights/the-five-trademarks-of-agile-organizations?cid=soc-web



アジャイル組織:前編

アジャイルの考え方の始まり:


2000年までに、ソフトウェア製品開発者は課題に直面していました。

製品リリースのスピードが非常に遅く、製品の準備が整う頃にはすでに陳腐化しており、顧客のニーズは変わってしまっていたのでした。

”組織アナーキスト”と呼ばれる17人のソフトウェア開発者が、ソフトウェア開発に対する典型的なウォーターフォールアプローチの代替アプローチを探していた2001年に、すべてが変わったのでした。


それは、組織が急速に変化する状況に迅速に適応することを目的に、作業の編成、リソースの展開、意思決定、およびパフォーマンスの管理方法に関する確立された新しい原理を活用することでした。


彼らは、新しい価値、方法論、および作業方法を提案し、その後16年間に亘り製品開発と技術の分野を席巻しました。

これが後に”アジャイルソフトウェア開発”または”アジャイルテクノロジー”として知られるようになったのでした。


従来の組織モデルと比較して、この新しいアプローチは、そのルーツに合わせて”アジャイル組織”と呼ばれ、根本的に異なる21世紀の高機能組織として浮上しています。



アジャイル組織とは何か?


既存の組織は、静的でサイロ化された組織的なヒエラルキーです。

その中では、目標および決定権はヒエラルキーの最上位にあり、下層に指示を出し、その指示をもとに各々の業務を遂行し、階層全体、そして組織全体を動かしていきます。いわゆるトップダウンの組織構造です。

このような組織の骨格構造は強力ですが、多くの場合、意思決定や行動・改革までの動きは遅く、日々状況が目まぐるしく変わるデジタル時代には合わなくなりつつあります。


それとは対照的にアジャイル組織は、安定性とダイナミズム(動的)の両方を目的としています。

テクノロジーによって可能となる迅速な学習および意思決定サイクルで動く人間中心のネットワークであり、強力な共通のコアバリューによって動かされ、すべての利害関係者と価値を共創します。


したがって、アジャイル組織は安定性に速度と適応性を向上し、不安定性(volatile)、不確実性(uncertain)、複雑性(complex)、あいまいさ(ambiguous)を含む(VUCA)条件で競争上の優位性の重要なソースを作り出す組織の在り方なのです。


古いパラダイム:機械としての組織


ではまず、古いパラダイムから見てみましょう。


1910年、米国の自動車会社の草分け、フォード社はその他多くの小さな自動車メーカーの1つでした。


10年後、フォードは世界の新しい自動車市場で60%の市場シェアを獲得しました。

フォードは、1台あたりの組み立て時間を12時間から90分に短縮し、価格を850米ドルから300米ドルに減額すると同時に、従業員には割高な給料を支払ったのです。


フォードのアイデアと同時代のフレデリック・テイラー(技術者で経営者。後に科学的管理法の父と呼ばれる)のアイデアは、科学的なマネージメントから発せられ、科学的手法を使用して労働生産性を最適化した画期的な洞察だったのです。

これらにより、前例のない有効性と効率性の時代を切り開いたのでした。


テイラーのアイデアは、現代の品質管理、総合的な品質管理、そしてテイラーの弟子、ヘンリー・ガントを通じてのプロジェクトマネージメントを形作りました。

ガレス・モーガンは、フォードなどのテイラー主義組織を階層的かつ専門的であり、機械として描写していると説明しています。

テイラーによると1911年から2011年までは”マネージメント期”であったといいます。



古いパラダイムに挑戦する破壊的トレンド


現在、産業・経済・社会を変革する”デジタル革命”がもたらす組織的な課題に直面し、機械のパラダイムシフトが起っていることが明らかになりました。

これは、現在の4つの傾向で表されます。


①急速に進化する環境

現在、利害関係者の需要パターンは急速に進化しています。

顧客、パートナー、規制当局にはそれぞれ異なるニーズがあります。


②破壊的テクノロジーの絶え間ない進化

デジタル化、バイオサイエンスの進歩、新しいモデルの革新的な使用、および自動化を通じてコモディティ化または他のものに置き換えられています。

例:機械学習、IoT、ロボット工学などの開発


③加速する情報のデジタル化と民主化

情報量、透明性、および伝達手段の増加により、組織は顧客、パートナー、スタッフとの多方向コミュニケーションおよび複雑な関わりに迅速に対応する必要があります。


④人材獲得のための新しい戦い

クリエイティブな知識ベースおよび学習ベースのタスクがより重要になるにつれて、組織はより多様で最適な人材を獲得し、つなぎ留めるための独特の価値提案を必要としています。より多様なバックグラウンド、思考、構成、経験、欲求を持った人材(ミレニアル世代など)が必要とされます。



古いパラダイムに挑戦する破壊的トレンド

新しいパラダイム:生き物としての組織


上記の傾向は、組織と従業員の働き方を劇的に変えています。


それでは、今後100年間に支配的となる組織パラダイムは何でしょうか?

企業はどのように安定性とダイナミズムのバランスをとるのでしょうか?

さらに、どの企業が市場を支配し、最高の人材を惹き付けられるのでしょうか?


アジャイル組織は、ゆっくりと進化する安定したバックボーン要素を持ち、新しい課題や機会には迅速に適応できるダイナミックな機能をサポートします。


例えるとスマートフォンのようなものです。

デバイス自体はゆっくりと進化し、安定したプラットフォームとして機能します。そして、そこには無数の動的なアプリケーションがあり、それらはユーザーにユニークで便利なツールを迅速に提供します。


(図1)

アジャイル組織の新しい組織パラダイム

調査によると、アジャイル組織は組織健康度の上位4分の1になる確立が70%もあり、それは長期的なパフォーマンスの最良の指標でもあります。

顧客中心、市場投入までの時間の短縮、収益の増加、コストの削減、従業員の積極的な関与、なども同時達成が可能になります。例:


  • グローバルなエレクトロニクス企業がEBITDA2億5,000万米ドルを提供。教育から雇用までのチームでアジャイル運用モデルを採用することで、3年間で株価が20%上昇。

  • グローバルな銀行が従業員のエンゲージメント、顧客満足度、市場投入までの時間を大幅に改善しながら、コストベースを約30%削減。

  • 基本資材企業が肉体労働者の継続的な改善を促進したところ、有効性は25%向上、負傷は60%減少。

後半へ続く>

 

前編では、アジャイル組織とは何か、アジャイル組織がどのようにして生まれたかをご紹介しました。

後編では、アジャイル組織を作るための5つのポイントに関して解説していきます。


 

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