top of page

【公平と実力主義は、どこまで組織を支えられるのか】


最近、とある研究論文を読みました。

2026年2月末に発表されたもので、内容は日本とベトナムの企業において i-deals(個別条件交渉)が組織文化にどのような影響を与えるかを分析したものです。


筆者は神戸大学大学院経営学研究科服部 泰宏教授とハノイ貿易大学の複数の研究者。

掲載誌は Asia Pacific Journal of Management。

日越比較という文脈で、制度と文化の関係を丁寧に掘り下げた、静謐で重要な研究であると感じました。




この論文が示していたのは、とてもシンプルなことでした。

手続きが公平でも、文化は安定しないことがある。

個別条件交渉は合理的です。市場に合わせるのは自然なことです。

弊社自身、その交渉の現場にいます。だからこそ、この研究で示された分析は他人事とは思えませんでした。


論文では、 個別交渉が徐々に組織を「個人主義的に傾ける可能性」を指摘しています。

受益者は、やがてその待遇を当然と感じるようになる。周囲は、自然と比較する。

これは善悪の問題ではありません。

人間が比較する存在である以上、 避けられない動きです。


本ブログの筆者(論文の筆者ではありません)は、若い頃、公平と実力主義をほとんど疑っていませんでした。

努力すれば報われる。実力があれば上がれる。制度が整えば組織は強くなる。

それは今でも間違いではないと思います。

ただ時を経るに連れ、それだけでは足りないのではないか、と思うようになりました。


公平は、秩序を作ります。実力主義は、競争を活性化させます。

けれど、公平は関係を温めるとは限らない。実力主義は信頼を育てるとは限らない。

制度が精緻になるほど、比較もまた精緻になります。

比較が続くと、組織は静かに「評価される個人」の集合へと変わっていく。

それ自体は近代的で合理的です。

でも、それが30年続いたとき、どんな組織風景になるのでしょうか。


ベトナムのビジネス界は今、とてもエネルギーがあります。

市場原理や実力主義を取り入れながら、急速に発展している。

その姿は力強い。

同時に、少し立ち止まって考えてみたくもなります。

私たちは何を最大化しようとしているのか。

成長か、効率か。競争優位か。

それとも、長く続く信頼や関係性も含めた「持続性」なのか。

欧米型のモデルは多くの成功を生みました。同時に、多くの緊張も生みました。

ベトナムは同じ軌道をたどるのか。それとも少し違う物語を描くのか。

もちろん弊社は外から評価する立場などではありません。

むしろ同じ市場の中にいる一人です。

だからこそ、この研究は弊社自身への問いにもなっています。



弊社は人材紹介事業を行っておりますが、最近は条件そのものよりも、


「この採用は組織の物語をどう変えるのか」


を考える時間が増えました。


制度は設計できます。公平も設計できます。

けれど、 信頼は設計というより、積み重ねられるものかもしれません。

この論文は、制度を否定していません。実力主義を否定してもいません。

ただ、それだけに頼ることの静かなリスクを示している。

日本・ベトナム両国の経営者にとっても、一度読んでみる価値のある研究だと思います。



終わりに

公平と実力主義は必要です。

けれど、それは「土台」かもしれない。

その上に何を築くのか。

そこを、これからもう少し丁寧に考えたいと思っています。


2026年旧正月のホーチミン市の様子
2026年旧正月のホーチミン市の様子

 
 
 

1件のコメント


This article raises important points about balancing fairness and individuality in organizations. Trust-building beyond formal systems is crucial for lasting success. ai detector music

いいね!

Grasp!

​Ho Chi Minh Office

6th Floor Golden House Buiding, Sunwah Pearl, 90 Nguyen Huu Canh Street, Ward 22, Binh Thanh District, Ho Chi Minh City, Viet Nam.

Hanoi Office

Unit A2.6c, 2nd floor, Tower A, Golden Palace Building, Me Tri street, Me Tri ward, Nam Tu Liem district, Hanoi

メール・お電話・AI Chatでお気軽にご連絡ください

Grasp!メールアドレス
Grasp!電話番号

+84 (0)90-6299930 (日本語・English)

+84 (0)90-9820998 (Tiếng việt・日本語)

​※ベトナム国外からのお問い合わせの際は国番号+84が必要です。

Classic Title

  • Facebook
  • X
  • LinkedIn

 © 2025 by Grasp!

bottom of page