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「なぜ誰も反対しなくなるのか?」ベトナム企業・日系企業に潜む組織の同調構造


日系企業とベトナム系企業が組織づくりに奔走するビジネス都市、ホーチミン市の風景
日系企業とベトナム系企業が組織づくりに奔走するビジネス都市、ホーチミン市の風景

★仮説ノート


「あの会議、最初から結論が決まってたよな」——そんな経験はないでしょうか。

近年、エコーチェンバーという概念が注目されています。もともとはSNSやメディアの文脈で使われる言葉で、似た意見を持つ人々が集まることで、特定の考え方だけが反響・増幅され、異なる意見が届かなくなる現象を指します。

しかしこれは、オンラインの世界だけの話ではありません。ベトナム企業でも、日系企業でも、組織の内側に同じ構造が生まれていることがあります。

誰も反対しない会議。報告されない現場の不満。「それが当社のやり方だから」という思考停止。

これらはすべて、組織内エコーチェンバーの兆候かもしれません。

ひとつ注目したいのが、**「言語化」**という言葉です。近年ビジネスの場でよく聞かれるようになりましたが、「言語化できた=理解できた」と感じた瞬間に、思考が止まることがあります。名前がつくと、それ以上掘り下げなくなる。エコーチェンバーもその一例で、「ああ、あれのことね」と分かった気になることで、自分たちの組織の問題として見えなくなるリスクがあります。

今回は、ベトナムと日本という異なる文化的背景を持つ企業組織において、この現象がどのように生まれ、どう違いとして表れるのかを考えてみます。


関連する主な概念

概念

内容

グループシンク

集団の凝集性が批判的思考を抑制する

心理的安全性の欠如

「発言しても安全」と感じられない状態

権威勾配

上下関係が強く、問題を指摘できなくなる

情報カスケード

多数派の意見に後続が乗り、個人の視点が埋もれる

共通する構造

上司への配慮、空気を読む文化、反対意見を出しにくい雰囲気——これらは両者に共通して見られます。いずれも心理的安全性の低さ権威勾配が根底にあります。ただし、グループシンクが生まれる背景とその表れ方は、両者でかなり異なります。


■日系企業:「前例」と「空気」が固定化する

日系企業では、グループシンクは「前例」「社内規定」「組織の雰囲気」によって長期間かけてゆっくりと固定化されていきます。過去の成功体験が変化への抵抗要因となり、不満があっても退職せずに在籍し続ける傾向があるため、問題が表面化しにくい構造です。

会議や意思決定前のすり合わせの場では本音がなかなか見えてきません。情報カスケードが起きやすく、「場の空気」として既に決まっている結論に向かって議論が進む傾向があります。


■ベトナム企業:「人間関係」と「成長スピード」が生み出す

ベトナム企業では、グループシンクは「個人的な人間関係」「上司との距離感」「経営者・トップへの意思決定集中」から生まれやすいと仮説できます。特に注目すべきはそのスピードの速さで、急成長期の企業では短期間で形成されることがあります。

「最近の成功体験」が社内でいち早く「正解」として定着してしまう傾向も見られます。また、不満を言語化する前に転職してしまうケースが多く、問題が顕在化する前に人材流出が起きるというリスクがあります。

さらに重要なのは、本音が出てくる場の違いです。ベトナムでは公式な会議よりも、信頼関係のある人との個別の会話の中に本音が現れやすい。「何を言うか」だけでなく、「誰に言うか」が非常に重要な意味を持ちます。


■日系企業×ベトナム現地法人という特殊な構造

日本に本社を持つ企業がベトナムに展開している場合、日本側・ベトナム側それぞれが独自のグループシンクに入り込んでいる可能性があります。

  • 🇯🇵 日本本社:「大きな問題の報告がないから、現場はうまくいっている」と思い込む

  • 🇻🇳 ベトナム現場:「報告しても理解してもらえない」と感じて沈黙する

この構造が積み重なると、現場の実態と経営判断の間に大きなギャップが生まれます。


※打破するために※

ベトナムの組織においては、公式な会議だけでなく非公式な対話チャネルの重要性が高いという言わず物がなの認識が暗黙のうちに共有されています。匿名アンケート、1on1面談、ランチミーティング、日常的な雑談、飲み会——こうした場が、組織の本音を引き出す重要な機能を担っています。

大切なのは、反対意見を出せる仕組みを作るだけでなく、その意見を受け止め実際の改善につなげる心的姿勢です。心理的安全性は「制度」ではなく「日常の態度」から生まれるといえるでしょう。

筆者個人的には思う最も重要な「日常の態度」は、


①自己開示

②言葉を大切にする


です。


①は自らが徹底的に腹を割って本音をぶつけること。

②は①と重なるのですが、「言葉に暗意や裏の意味を残さない」「言葉の裏を読ませるようなコミュニケーションはできる限りさける」


ということかと言えます。




■比較まとめ


日系企業

ベトナム企業

主な原因

前例・空気・規定

人間関係・トップ集中

形成スピード

長期間かけて固定化

急成長期に短期間で

不満の出方

在籍しながら沈黙

転職という形で表出

本音が出る場

会議外のすり合わせ

個人的な信頼関係の中

主な概念

情報カスケード・慣性

権威勾配・グループシンク

異なる意見を聞き取れる組織は、市場と人材の変化に素早く適応できる——これはベトナムでも日本でも変わらない本質だと思います。


皆さんの組織ではいかがでしょうか?


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